【Stray考察】ロボット達

 このゲームに生物としての人間は、写真なども含め一切登場しない。B-12の記憶やロボット達の歴史として、かつて街に住んでいたことが語られるのみである。

 

 その代わりに、ゲームには個性豊かなロボット達が多数登場する。彼らはロボットであるが大変人間くさい…を通り越してもはや見た目がロボットなだけの人間そのものである。彼らは眠り、笑い、怒り、酒(というかオイル?)で酔っ払い、性別や親子の概念まで備えている。SFでよく見かける、「感情を持ったロボット」という範疇を遥かに超えている。

 

酒場のロボット達
こんな風景はいまどき人間でも見ない

 まず、彼らの出自について考えてみよう。街はかつての人類が造り上げたものであるが、今は代わりにロボット達が住んでいる。彼らは一体どこから来たのだろうか?

 彼らのルーツ自体は、スラムで入手できるメモリーで案外すぐにハッキリする。それによれば人間をサポートするためのお掃除ロボットが彼らのオリジナルにあたるらしい。おそらく最終チャプターのコントロールルームに登場する、無個性な作業ロボットたちがそれにあたる。下層を含む、都市のあらゆる場所で人間のために使役され、いつしか住民として成り代わったのだろう。

 

コントロールルームで働くお掃除ロボ
ロボットらしく無個性で、動きもぎこちない

 ところでB-12は次第に彼らが人間の真似事を始めたと語るが、実際はどうだろう。相当に長い時間があったとはいえ、自発的に、それも少なくない台数のロボットが人間のように振る舞いはじめるとは考えにくい。現に、コントロールルームにいるロボット達は当時のまま変わっていないようにみえる。

 B-12のボディとなるドローンを見つけた部屋を思い出してほしい。あの部屋には、いかにも人間一人が入りそうなカプセルがあり、例のロボットとケーブルで接続されている。おそらくB-12は、本来このロボットに意識を移す予定であり、それに失敗してネットワークの世界に閉じ込められてしまったのだろう。成功を願うメモが貼り付けられていることからも、転送の成功率は高くないことが窺える。この意識転送を運良く成功させた者たちこそが、ゲーム中に登場するロボット達なのではないだろうか?これであれば彼らの異常なまで人間くささに説明がつく。「人間みたいなロボット」ではなく「ロボットのボディを持つ人間」なのである。

 ところで、なぜこの街に都合よく意識転送のできる設備があったのだろうか?詳しい事情については別の記事で考察したいが、おそらく人類は病気にならない機械の体に、人間の意識を移す技術をもとより研究していたのだ。アパートやアントビレッジにあるカプセルも、この研究の一環で作られたものだろう。もしかすると、B-12も科学者としてこの研究に関わっていたのかもしれない。

 

カプセルと動かないロボット
人間が入っていると考えると、流れ出ている液体は・・・

 だがこれだけでは説明がつかないことがある。B-12を除いて、誰一人として人間だった頃の記憶を持っていないことだ。彼らは人の心を持ちながら、自らを「元人間」ではなく、あくまで「ロボット」として認識している。

 またもB-12の話になるが、彼は復活当時は自らを「ある科学者の下で働いていた」と説明していた。後々わかることだが、この記憶は間違いであり、彼自身が科学者であった。何故このような間違い起こったのだろうか?転送直後で混乱していた可能性もあるが、あの部屋にいたロボットの存在を考えると別の見方ができる。

 「科学者の下で働いていた」のは実は間違いではなかった。このロボットは実際に助手をしていて、その記憶がB-12に反映されたのだ。実用化を急いだこの意識転送の技術は不完全なもので、人格は転送できるが、記憶は素体となったロボットのもので上書きされてしまうのだろう。B-12だけが断片的ながら人間の記憶を維持していたが、これについては長くなってしまいそうなので別の記事で説明したい。

 

Momoの落書き
お掃除ロボが人の心を持つに至った経緯をきわめて端的に説明している

 つまり、「ロボットのボディと記憶」に「人間だったころの心」をアップロードした者が、ゲーム内で出会う住民達の正体である。B-12が「ロボット達が人間の真似事をはじめた」ように見えたのも、「意識転送を行った」という人間の記憶が欠落した状態で彼らを観察していたからだろう。彼らのほとんどが、未知の生き物のはずのネコに対して友好的なのもこれで説明できる。やはり人間は本能的にネコが大好きなのだ。

 

 いかがだったでしょうか。この手の記事にデスマス口調は馴染まないので、それらしい感じにしてみました。とりあえず私の中でよくまとまった部分を記事にしましたが、ゲーム全体の世界観をまだ完全に把握できているわけではないので、今後の考察でひっくりかえってしまうかもしれませんね。それが面白いのかもしれませんが。

 

ではまた~。